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写真が上手くならない…と悩むあなたへ。撮影技術の前に学ぶべきたった一つのこと

「もっと心に響く写真が撮りたい」 「自分の写真に何が足りないんだろう?」

カメラを手に、日々試行錯誤を繰り返す中で、多くの人がそんな悩みにぶつかります。写真の構図や光の捉え方、最新の機材情報ばかりを追いかけてしまいがちですが、もしあなたの写真が伸び悩んでいるとしたら、それは「撮り方」の前に「見方」を学ぶ必要があるサインなのかもしれません。

私が最近学んだことは、まさにその「写真の読み方」。これが、あなたの写真を根本から変え、表現の幅を大きく広げる鍵となります。

なぜ、写真の「読み方」が重要なのか?

結論から言うと、写真の「読み方」を学ぶことで、写真の撮り方が劇的に変わり、写真との向き合い方そのものが豊かになるからです。

写真は、ただの記録ではありません。一枚一枚に、撮影者の意図や背景、そして見る人に語りかける物語が込められた、奥深い「読み物」なのです。ここでは、その理由を3つのポイントで解説します。

ポイント1: 全ての写真には「物語」が存在する

シャッターが切られたその瞬間には、必ず前後の文脈や背景となる物語があります。何気ない風景写真であっても、「なぜここで撮ったのか?」「この先に何があるのか?」を想像することで、写真は単なる平面的なイメージから、奥行きのある世界へと変わります。

ポイント2: 優れた写真は「想像力」を掻き立てる

一流の写真家は、見る人の想像力を巧みに刺激します。あえて情報を限定し、全てを語らないことで、見る人は写真の中に自ら入り込み、物語の続きを考え始めます。この「余白」こそが、人を惹きつける写真の秘密なのです。

ポイント3: 構図や色使い、全てに「意図」がある

構図、光、色、被写体の選び方…。写真に写る全ての要素には、撮影者のメッセージが隠されています。なぜこのアングルなのか、なぜこの色を選んだのか。その意図を読み解こうとすることで、写真から受け取るメッセージの深さは格段に変わります。

名作から学ぶ「写真の読み方」実践編

では、具体的にどうやって写真を「読む」のでしょうか?次の3つの名作写真集を例に見ていきましょう。

1. 深瀬昌久『鴉 (Karasu)』

(画像はイメージです)

妻との別離という深い喪失感の中から生まれた、世界的に評価の高い一冊です。深瀬は、不吉の象徴ともされるカラスに自らの孤独や心情を投影し、執拗に撮り続けました。荒れた粒子、暗く沈んだトーン、ブレたカラスの姿。これらは単なる技術的な失敗ではなく、作者の心の叫びそのものです。この写真集を読むとき、私たちは写真の背後にある作者の壮絶な物語を感じ取り、カラスというモチーフに込められた意図を読み解き、自身の感情と重ね合わせることで、その世界に深く引き込まれます。

2. 川内倫子『うたたね (Utatane)』

(画像はイメージです)

食事、虫、水面のきらめき、子供。私たちの身の回りにある、見過ごしてしまいがちな何気ない日常の断片を、柔らかな光と独特の色彩感覚で切り取った作品です。一枚一枚に大きな事件があるわけではありませんが、写真の連なりを眺めていると、生と死、美しさと儚さが静かに浮かび上がってきます。これは、作者が日常の中に潜む微細な物語を見つけ出し、それを6×6の正方形フォーマットと優しい光という表現方法で統一することで、見る人の想像力に「これは何だろう?」と静かに問いかける、詩的な一冊です。

3. 森山大道『写真よさようなら (Bye Bye Photography)』

(画像はイメージです)

「アレ・ブレ・ボケ(荒れ・ブレ・ボケ)」と評されるスタイルを象徴する、衝撃的な写真集です。本作では、ピントが合っている写真はほとんどなく、粒子は粗く、何が写っているのか判別しがたいイメージが続きます。これは、従来の「上手い写真」の概念を根底から覆し、「見る」という行為そのものを問い直す、極めて意図的な試みです。見る人は、不鮮明なイメージの中から必死に意味や物語を読み解こうとし、自らの記憶や感覚を総動員させられます。これは、完成された答えを与えるのではなく、見る人の想像力を極限まで掻き立てる、「写真とは何か?」を考えさせるための挑発的な一冊と言えるでしょう。

まとめ:撮る前に、まず「読んで」みよう

今回ご紹介したように、写真の表面的な美しさだけでなく、その背後にある物語や作者の意図を読み解こうとすること。これが、あなたの写真を次のステージへと引き上げるための、非常に重要なステップです。

今度、写真集を手に取ったり、写真展に足を運んだりした際には、ぜひこう自問してみてください。

  • この写真家は、何を伝えたかったのか?
  • なぜ、この構図、この色を選んだのか?
  • この写真を見ることで、どんな気持ちや想像が掻き立てられるだろうか?

他者の作品を深く「読む」訓練は、そのまま自分の撮影に活きてきます。「何を、どう見せれば、人の心を動かせるのか」。その視点を得ることで、あなたの写真は単なる記録から、メッセージを持つ「作品」へと昇華していくはずです。

もし今、あなたが撮影に悩んでいるのなら、一度カメラを置いて、じっくりと一枚の写真を「読んで」みてはいかがでしょうか。そこには、あなたの表現の幅を無限に広げるヒントが隠されているはずです。